<イノベーション>技術思想

みなさん、おはようございます。

夜明け前です。外は真暗。

まだ頭の中できちんと整理ができていませんが、

なんとなくイメージができてきたので書きながら整理していこうと思います。

今回ご紹介するのは

飯田賢一(著)『技術思想の先駆者たち』

(東経選書, 1977年,¥1,300:古書にて購入)

まずは著者のプロフィールを抜粋します

飯田賢一氏

都立電気工業(現都立工業工業高専)卒業

東京大学航空研究所

鎌倉デミア等を経て東洋大学文学部卒業

東洋文化交流研究所員、八幡製鉄委託、

新日本製鉄鉄鋼調査部参事等を歴任

現在(当時)国際商科大学教養部教授

早大理工学部・武蔵野美大・東京工大各講師(技術史・思想史)

(本書より抜粋)

さて、私たちがこの本のタイトルを見てまず思うのは

「技術思想」とは何だろう?ということではないでしょうか。

著者は以下のように述べています。

「ほんらい人類が生きてゆくことのうえでの最も基本的な

営みである技術と思想、この二つはわかちがたく密接に

結びついている」(P.6)

またこのようにも書かれています

「思想とは、私たちがそれによって人間として生きる、いわば

人間生活の根底を貫いているものである。

技術とは、私たちがそれを通じないでは人間として社会的に

生きつづけてゆくことができないほどに、人間生活の基盤を

支えているものである。

私たちが生きてゆくことのうえでの最も基本的な営みである

技術と思想、この2つは本来わかちがたく結びついているに

ちがいない」(p.14)

以上のように、「技術」と「思想」はわかちがたく密接に

結びついているものであると理解できるのです。

私は、これを飛躍して考えるに、私が探していた

「根っこ」とはすなわちこの「思想」であり

ここでは特に「技術思想」であったと結論付けるのであります。

そこには「魂」が宿っているのだとも思います。

本書は、非常に入手困難な本だと思いますので、内容を詳しく

ご紹介したいところではありますが、著作権の保護の問題もありますので

簡略して、ざっくりと感想を書くにとどめたいと思います。

まず、本書は下記の第三期に分けて、日本の技術史をまとめています。

そして、本書のタイトルの通り、「技術思想の先駆者」たち計20名に

ついて紹介されています。

本書をもとに下記のようにまとめたいと思います。

第一期 古代から1850年代(科学なき技術の時代:知恵としての技術の時代)

 佐久間象山・江川担庵

(1853年にペリー来航 開国前後のころ)

第二期 1850年代から1910年代(第一次世界大戦期まで:

伝統技術から洋式技術への移り行きの時代)

 1.大島高任・本木昌造・福沢諭吉・広瀬宰平・田中正造

 2.エルウィン・ベルツ,  タルト・ネット―, ゴットフリート・ワグナー

 3.野呂景義・下村幸太郎・手島精一・古市公威・広井 勇

第三期 1910年代から現代(1980年代)まで(科学的技術の時代)

  小平浪平・小泉嘉一郎・本田光太郎・島津源蔵

(p.7~p.8,p.11より作成)

日本はペリーの黒船来航を機に、国防の急務からおそらく世界に類を見ないほどの

スピードで近代化を達成することができました。

その過程で、どのようにして西洋の進んだ技術を取り入れ、

近代化を達成することができたのでしょうか。

本書を読むと、その道のりは決して平たんなものではなかったことが

伺えます。

先の投稿でも触れましたが、佐久間象山の残した言葉。

「和魂洋才」

もとは菅原道真の「和魂漢才」に由来する言葉だそうですが、

このように日本は古来からずっと外国の文化や技術を取り入れて

自国になじませるのが得意な気質です。

しかし、その一方で古来のものが廃れてしまうというのも

我が国の特徴なのかもしれません。

憶測ではありますが、そういった日本人の特性において

江戸時代の鎖国政策の時期は特異な時代だったのかもしれません。

本書には触れられていませんが、外国の技術が入ってくる以前に

「科学技術の知識」こそなかったものの、新しい知識や技術を

短期間に習得できるだけの下地が江戸時代にすでにあったのでは

ないでしょうか。

そして「武士道」という、日本に特有な精神論が生まれたのも

重要だったのではないかと思うのです。

本書を通じて、鉄鋼に関するお話が多く見受けられます。

「鉄は国家なり」という言葉もあるように、防衛上重要な産業であったということも

あるのかと思いますし、著者のプロフィールからしても、鉄鋼に関する知識が

あるが故かと思います。

製鉄技術に関するお話を通じて見えてくるのは、ただ単に外国の設備や技術を

移植しただけではうまくいかないということ。

それには、その地域に応じた改良が必要であったということ。

そのことに象徴されるように、ただ技術を丸のみしていただけでは、

今日の日本の繁栄はなかったということがわかります。

本書では、「土着思想」を貫いた島津源蔵氏(現島津製作所の創設者)、

現日立製作所の小平浪平氏は外国の資本を入れず自主技術開発の

推進を図った人物などの功績が紹介されています。

このように、「和魂」は確かにこの時代には残っていたのだと感じます。

さて、タイムスリップの旅から戻って現在を見直してみます。

すると、本書が書かれていた時代は「産業革命」を経て

日本に新しい技術が入ってきた時代。

現在は「デジタル革命」に突入しています。

明治維新の時代には、海外に派遣や留学に赴いた人々が

たくさんいたと思います。

そして、本書で紹介された3人の外国人講師のように

海外から技術支援や教育のために現在も招かれていたり、

今後たくさんの人々が海外でAIやDXの教育を学びに

行かれることでしょう。

本書を読み終えて学んだことは、技術は思想を伴わなければならないということ。

ただ単に、技術を習得するだけでは、真にこの国に根付くのは

難しいということ。

そして外国に頼り切るのではなく、自国で海外をしのぐ研究が

できないのだろうかと、努力することの大切さではないかと思います。

最後に我が国を愛し、愛するがゆえに批判したエルウィン・べルツ氏の言葉を

引用して終わりたいと思います。

「日本では性急に彼等から今日の科学の成果だけを受け取ろうとした。

彼等から最新の成果をもたらす精神を学ぼうとせず、

最新の成果そのものを受け継ぐことで満足していたのであります。」

(p.96)

つまりは、海外の技術にもやはり「技術思想」があり、

私たちはその思想を学ばずその成果だけを受け取ろうとしているのでしょう。

ベルツ氏について書かれた論文を教えてもらったので、共有します。

「ベルツの「遺言」 日本に「学術の樹」を」

黒川 清 氏 東京大学名誉教授

で検索してみて下さい。論文をダウンロードできます。

さて、次回は「食と農」について本を読んでみたいと思います。

あれ?順番はこれでよかったかな?

今回かなり読みごたえがあったので、少し頭の切り替えが

したくなりました。

それでは、今日もよい一日を!

追伸 

私のブログでの執筆活動は、自分の今興味のあることを

探求しつつ、みなさんにとって有益となると思われる

情報を提供できるように努めているとご理解ください。

ブログを続けて気が付いたのは、またいつか何かの研究をして

みたいという思いが心のどこかでくすぶっていたのだと。

また、資格取得のための学業を最優先しておりますし、

現在みなさまのお役に立てるような資格も持っておりませんので

今後も当面お問い合わせフォームの開設は考えておりません。

もし何かご質問がありましたら、質問フォームに送っていただければ

反映させていただきたいと思います。

一体どんな人がこのブログを書いているのだろう?と疑問に

思われるかもしれませんが、主役はこれまでご紹介してきた

本たちであり、これからご紹介するあるいはこれから出会う

本なので、よかったらどんな本を紹介しているのかに

着目していただければ幸いです。

<ブレイクスルー バックヤード>を検索していただくと

ブログの舞台裏で、私が何を感じてどんな視点で本を選んでいるのか

イメージしていただけるのではないかと思います。

このブログも、来月で早2年目に入ります。

長らくお付き合いいただけている読者の方々、最近ご訪問いただいた読者の方々にも

心よりお礼申し上げます。

このブログは私が読みたい、伝えたいと思う本がある限り、続けていきたいと

思っております。

今後とも末永くお付き合いいただければ幸いです。

カテゴリー: イノベーション, 問題解決 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です