失敗から何を学ぶ―『失敗の本質』

みなさん、こんばんは。

これは、夏休みに家族と一緒に訪れた「大和ミュージアム」の写真です。

対象物が大きいので、どうしても見学されている方が映り込んでしまうので、最小限の

ショットに削りました。言うまでもなく、戦艦大和の模型です。

野中郁次郎先生が、戦史の研究もされているということは以前から承知していましたが、

やはり戦争のお話は苦手だなと避けてきました。

今回、思い切って戦記に関する書籍を読もうと思ったのは、この大和ミュージアムに訪れたことが大きいかもしれません。

自分の子どもくらいの若者が大和と共に海底へと沈んでいったと思うと、つらかったです。

海底に沈んだ大和の映像を、館内で見ることができました。映像の最後に戦没者の

お名前の字幕が流れると、涙がこぼれました。

こうした尊い犠牲をどう弔えばよいのだろうか。

ここに訪れた意味を考えさせられました。

今回ご紹介するのは

戸部良一氏 他著 『失敗の本質』(中央文庫, 2024(初版1991)年, 762+税)

『失敗の本質』は、このブログで読書を続けた中で最もつらい読書でした。

もう、無理。やっぱりやめようかなと、何度も思いました。

お話も難解でした。馴染みのない言葉が次々と出てくる。

戦局がよくつかめない。

でも、何とか事例研究を読み終えると、2章からトンネルを抜け出したように

視野が開けるのです。

それでは、順序が前後しますが著者の先生方をご紹介しましょう。

戸部 良一 (氏) 国際日本文化研究センター名誉教授(政治外交史 専攻)

寺本 義也 (氏) 元早稲田大学大学院名誉教授(組織論専攻)

鎌田 伸一 (氏)元防衛大学校教授(組織論専攻)

村井 友秀 (氏)防衛大学校名誉教授(軍事史専攻)

野中郁次郎 (氏)一橋大学名誉教授(組織論専攻)

以上

本書によると、日本軍が大敗した原因の一つとして、「組織」の問題が指摘されています。

日本軍は組織で戦い、組織の失敗で敗退してしまったともいえるようです。

この教訓から、日本は何を学んだのでしょうか?

日本軍の組織の問題点は、今日改善されたのでしょうか?それともそのまま引き継がれているのでしょうか?

本書にはこのように書かれています。

「現段階では、日本軍の特性は連続的に今日の組織に生きている面と非連続的に

革新している面との両面があると考えている。」(p.395)

ゆえに、あらゆる組織に属する方々に、この本をぜひとも読んでいただきたいのです。

私が読む限りでは、日本軍の教育システムは今も根強く残っているように感じます。

正しい答えを導く、暗記重視の教育に偏重すると、予想外の事態が起きたときに

それに対処する柔軟な発想力がおろそかになってしまいます。

 それが、イノベーションを生みやすい土壌を創り出せない原因の一つになって

いるのかもしれません。

あるいは突拍子もないアイデアが出ることに抵抗がある、均質性を求める組織もまた

イノベーションの妨げになっているかもしれません。

日本軍の組織がどのような失敗をしたのか、本書を読まれた経営者の方々、

現場の方々、あるいはスポーツをされている方々は、思い当たるところが

多々あるのではないかと思います。

どうすれば著者らの言う「自己革新的組織」を築けるのか?

私自身は、「学校」教育はずっとこのまま変わらなくても

よいのだろうかと思います。

子どもたちが初めて「組織」の中に組み込まれていく、その初期の段階から

組織論は始まっているのではないだろうかと。そんな気がしました。

本書を読み終わって、とても感動しました。

著者の先生方に、心から感謝の意を表したいです。

歴史の資料から紐解く、とても困難で根気の必要な研究だったのでは

ないでしょうか。そして戦記から「組織論」の問題に焦点を当て、

その本質を見抜き、後世に素晴らしい教訓を残していただきました。

少しづつでもよいから、意識を変えていかなければならない。

日本の未来のためにと、散っていった人々に報いるために。

さて、幸運なことに『失敗の本質』には続編が出版されています。

四半世紀をかけて執筆されたということで、

変わりゆく日本をどのように分析されているのか、大変楽しみにしています。

次回は、続編を読みたいと思います。

それと、ひとつ前の記事でお知らせしましたが

2024.12.24-25の期間限定でnoteのメンバー限定記事の中から一つ

公開する予定にしています。

noteの記事一覧から、最もアクセス数の多かった記事を選びますので、

よかったら、みなさんの気になる記事をclickしてみて下さい。

締め切りは12.22(Sun)17:00です。

それでは、また。

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