<Social Inovation>生産者と消費者をつなぐ

みなさん、おはようございます。

今回ご紹介するのは

高橋 博之『都市と地方をかきまぜる―「食べる通信の」奇跡』

(光文社新書, 2019年, ¥740+税)

です。

前回、田中角榮氏の著書『日本列島改造計画』をご紹介しましたが、

引き続きテーマは「都市と地方」の課題。

田中角榮氏も、高橋博之氏も、位は違えどお二人とも政治家経験されていらっしゃいます。

そして、地方から都市へと移住された経験があり、都市と地方の問題をよくご存じだったということも共通点といえるでしょう。

お二人とも都市も地方も、行き詰っていると、そう感じておられました。

一方で、田中氏が主にインフラや都市開発に着目したのに対し、高橋氏は人に着目しています。

ここで、少し高橋氏のプロフィールに触れておきましょう。

高橋 博之

「東北食べる通信」編集長。

一般社団法人「日本食べる通信リーグ」代表理事。

2006年 岩手県議会議長補欠選挙に無所属で立候補し、初当選。

20111年 岩手県知事選に出馬するも、落選

2013年 特定非営利活動法人「東北開墾」を立ち上げ

    食べ物付き情報誌「東北食べる通信」編集長に就任

本書を読んで、いきなり「ガツン」ときた、というのが第一印象でした。

震災後から少し時間が経って、日常生活を取り戻した人たちの声。

インタビューに答えた漁師さんは、海を憎んでいないという。

日頃海から恵みを受けているのだからと。

津波のあとの漁場は豊かになるという。

なんという強さだろうと、そして海で漁をするということは

常に危険と隣り合わせだということを改めて感じます。

一方で、震災当時都市からたくさんのボランティアが

訪れた際には、実は都市に住む人々も何かに欠乏していたのだと

いうことを知ります。

『日本列島改造計画』から実に46年という歳月を経て、

都市と地方の問題はさらに深刻になり、心への影響も

深刻になっているのだと。

そんな中、著者が起こした小さな「革命」とは何か?。

読みながら、自分はどうだったのだろう?と

振り返ると、心が痛くなりました。

確かに毎日電車に揺られて、オフィスに向かい

だんだん食生活も乱れてくる。

やがて家には睡眠をとりに帰るだけのような、すさんだ生活を

送るようになっていました。

転機が訪れたのはやはり結婚して子どもが生まれたからだと

思います。

本書では語られませんでしたが、都市にいても「生」と向き合っていると思います。

子どもは「生」の塊です。

ペットだって、草木だって必死で生きていて、それに感動しているんだと思います。

きっと自然から離れて暮らす中で、自然への懐かしさから無意識に

「生」と触れ合いたいと思うのかもしれませんね。

それでも、到底十分とはいえないのかもしれませんね。

著者の取組みが評価されて、「グッドデザイン金賞受賞」

「日本サービス地方創生大臣賞受賞」と数々の賞を受賞されたようです。

本書がたくさんの方に読まれることによって、この活動がまずます

広がっていけばよいなと思いました。

ここからは、本書から離れて私見を少し書かせていただこうと思います。

本書を読んで、いくつか疑問が湧いてきたので、書いてよいものか迷ったのですが

せっかく素晴らしい問題定義を出していただいたのですから、もう少し違う角度で

問題を照らしてみたらどうかと思った次第です。

まず一つは、「流通」の問題。

去年だったか、民放で「ファーストペンギン」というドラマを拝見しました。

漁協の話が出てきたのですが、漁協と農協。

小学校の社会で習った以来、人生でほとんどかかわることがなかったのですが、

イメージとしては、農家や漁師を守るための組合だとそう認識しています。

それでも、後継者問題が深刻になり、これらの組合がうまく機能しなくなって

いるのだろうか?と。

個人と農家が直接つながるという取り組みは、果たしてそれまでの

流通システムにどんな影響を与えるのだろうか?と。

もう一つ、思い浮かぶのは「道の駅」

時々テレビで流れてくるのですが、道の駅の大盛況の風景。

わざわざ車で長時間かけて訪れて、さらに長蛇の列を作って

オープンを待ちわびる風景。

私たち消費者も、農家の新鮮で美味しい野菜や果物を欲しているのだと

わかります。

本書を読んで感じたのは、これまで「生産者」と「消費者」の間には

確かに壁があったのだろうと。

それは、流通制度に原因はなかったのだろうかと。

時代が変わり、生産者も消費者も人口が減りつつある中、

柔軟な改革が必要なのかもしれませんね。

そして一次産業の問題は、もはや国を挙げて

取り組まなければならない深刻な課題だと思います。

そこに、私たち消費者がどう関わっていけばよいのか、

本書はとても大きなヒントを与えてくれました。

一方で、別の角度から「農業」の魅力に迫ってみたいなという

思いがあります。

決して新しい話ではありませんが、「日本の農業」の

技術力は世界でもトップクラスだと言われています。

日本の地形は、本来農業には適していなかったと聞きます。

先人たちの並々ならぬ苦労と努力と知恵で、これほどまでに

美味しい農産物が作れるようになったのだと。

「農業」の可能性について、別の角度で本を紹介したいと思います。

ということで、次々回は「商店街」を予定していたのですが、

すみません、予定を変更して「食と農」をテーマにした本を

ご紹介したいと思います。

次週は、予定通り「技術思想」をご紹介します。

それでは、よい週末を!

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