みなさん、おはようございます。
真夜中に目が覚めて、一気に本を読み終えました。
後半は手が止まりませんでした。
いい意味で、「裏切られた」気がします。
「商店街」について書かれた本は、何冊もあったと思いますが、
その中でなぜこの本に惹かれたのか?
今はその時のことを思い出せません。
でも、間違いなく「商店街」のことをはじめて知る本として
この本を選んだことは正解だったと思います。
それでも、ここまでの事実を知る覚悟はありませんでした。
心の準備は整っていませんでした。
今回ご紹介する本は
新 雅史(著)
『商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道』
(光文社, 2012, ¥814)
まずは著者のプロフィールを
新 雅史 (あらた まさふみ)氏
学習院大学 非常勤講師(2012現在)
東京大学人文社会学系研究科博士課程単位取得退学
社会学者の方のようです。
本書は、ビジネス書でもなく、街づくりという視点で書かれたものではありません。
サブタイトルのとおり、社会観念、政治経済的側面、国際関係など非常に
幅広い視点で、包括的に書かれた、私から見ると「論文・論稿」ではないかと思います。
ところで、みなさんは「商店街」ときくとどんなイメージが浮かびますか?
ノストラジックなイメージでしょうか?活気にあふれるイメージ?
はたまたシャッター街のような寂しいイメージでしょうか?
私もそういえば、少し前に空堀商店街を案内してもらったのですが、
歴史のある風格のある商店街だったなという記憶があります。
老舗のお店ばかりではなく、最近は若い方がお店を出展されているようで、
おっしゃれなお店もありました。
いづれにしても、商店街を歩くと、そこはまるで異空間のような気がしますよね。
アーケードがあって、両脇にずらりとお店が並ぶ。
まさに表面的なイメージは思い浮かぶのですが、本書を読んで随分と印象が変わりました。
まず、商店街の歴史は思ったよりも浅いということ。
そして、商店街が激しい生存競争を切り抜けてきたという歴史。
政治と密接な関係があったという意外な事実。
安易になんとなく「商店街」に興味があるなあ、では済まされない敷居の高さを
感じました。
百貨店、大型スーパー、はたまたコンビニとの関係。
それはまさに生態系の如く複雑に絡み合う問題が内在していました。
奇しくも、昨日「ルービックキューブ」の話題に触れましたが、
まさに一面だけを揃えるだけでは他面が損をするというように、
すべての面を揃えるようなバランスの取れた関係が望ましいということ。
著者は、容赦ないほどに鋭く指摘をしていきます。
随分とスケールが大きな話になり、これは「商店街」のテーマだったよね、と
躊躇することもありますが、見事につながっていきます。
「商店街」を軸に置くと、社会の構造を見る目が変わってきます。
それはまさに生態系のバランスを崩してはいけないような、重要な役割を担ているように
思えてくるのです。
著者はあとがきで、自分の生い立ちについても触れています。
著者の商店街への、厳しい指摘がある中で、どこか愛情を感じるゆえんはここにあるのか
と納得します。
私個人としては、この本をスタートに、もう少し商店街の中身と可能性について
調べてみたいという気持ちになりました。
私が「商店街」に関心を持つ一つの理由が、大型スーパーの閉店による
買い物難民の問題があります。
車を運転しない買い物弱者にとって、死活問題です。
もう一つは、若者にとっての就労の選択の一つとしての可能性を感じます。
若い方々にとって、「商店街」というノストラジックな雰囲気は、むしろ新鮮では
ないでしょうか?
若者に限らず、様々な理由で就労が困難な人々を吸収できる可能性にも期待しています。
いやいや、本書を読むとそんな期待は甘いのかな?
本書は、「商店街」に興味をお持ちでない方も、日本のあまり知られていない歴史というか
流通業界、小売業界の裏側を知る、かなり読み応えのある本です。
本書の後半は、夢中で読んでいました。
これから買い物をするとき、ちょっと見方が変わりますね。
さて、次回は『科学革命の構造』を読みたいと思います。
多分かなり時間がかかると思います。
気長にお待ちいただければと思います。
そのあとは、いよいよ60年代から70年代に出版された古書を読みたいと思います。
様々な分野でご活躍された方々ですが、私はある意味「思想家」ではないかと
思っています。
その当時、敗戦後から高度成長を遂げた日本の奇跡の背景に、すぐれた
思想があったのではないかと期待しています。
それでは、今日もよい一日を!