みなさん、こんにちは。
ようやく止まっていた読書が動き出しました。
エンジン全開というわけにはいきませんが、ぼちぼち進めていきます。
今回に続いて次回も「都市と地方」「地方創生」をテーマに本紹介を
していこうと思います。
今回ご紹介するのは
田中角榮(著)『日本列島改造論【復刻版】』
(日刊工業新聞社, 2023年, ¥1,980)
この本をただの「歴史書」と位置付けることなかれ。
確かに、この本が書かれた時と今とでは状況が異なります。
経済成長率は伸び、人口がどんどん増加していたころと、
今のように経済はまだ停滞状況から抜け出したとはいえず
人口減少の深刻な問題を抱えている現在とでは。
しかし、本書から学ぶべきことは実に多く、その意義は大きいと
思います。
以前にも触れた通り、田中角榮氏の人物像を深く探るよりは、
先入観をできるだけ持たず、本書に書かれている声に耳を
傾ける方がよいのかなと思いましたが、それでも
田中氏の経歴等最低限必要な情報を書き出す方が、
本書の理解に役立つだろうと思いますので、簡単に書いておきます。
田中 角榮
大正 7.5.4 新潟県刈羽群西山町に生まれる
昭和 11.3.24 中央工学校土木課 卒業
18.12.1 田中土建工業株式会社 創設(25歳)
22.4.25 第23回衆議院総選挙で初当選 (28歳)
25.4.26 1級建築士資格取得
47.7.6 第64代内閣総理大臣就任 (54歳)
47.6 『日本列島改造論』執筆
<衆議院 勤続44年(当選17回)/ 議員立法 117本>
本書を読みながら、何度となくうなりました。
う~ん、なるほど。と。
政治や公共政策の授業は、少しは受けましたが、ほとんど知識がないので
田中氏の打ち出した法案や政策提言についてまったく判断はできませんが、
とにかくアイデアマンであり、勉強家であり、そして常人離れした先見の明の
持ち主であるように思いました。
リニアモーターカーにインターネット。
大正生まれの方が、そんなドラえもんの秘密道具を思いつくような発想が
できるなんて。まるで未来から来られたのではないかと、疑うほどです。
そして、日本列島をまさに人体のようにとらえて、その問題点を指摘し
処方箋を打ち出すのです。
非常にダイナミックで、マクロ的で、そして数字も細かい。
終盤になると、読んでいる自分が、なんだか巨大なロボットに乗り込んで
操縦してもらっているような気分になります。
そう、まさしく「国づくり」を上から眺めているような気分でした。
驚くことに、田中角榮氏の提言は、いくつも実現していますね。
瀬戸大橋も、リニアモーターカーもようやく実走可能になりましたし、
北陸新幹線、北海道、九州、そして最近では北陸新幹線も。
今私たちは、その恩恵を受けているのだなと、改めて
敬意と感謝の言葉を送りたいです。
田中角榮氏は、「都市の過密化」と「地方の過疎化」を同時に
解消することを目的として、本書でその問題点と処方箋、
そしてそれを実行に移すための行動計画を記しています。
実にスケールの大きい話ではありますが、
都市の工場を地方に分散させる(工業再配置)と
交通・情報通信のネットワークの形成などを通じて
都市から地方に人や資本を逆流させるといったものです。
これは、地方に公害を分散させるものではなく、
公害の少ない工場を移転させようと考えていたようです。
交通インフラに関しては、重量税やガソリン税の立法を成立させたようですね。
海外の事例も参考にされていたようですが、今では当たり前でも
当時は反対も多く大変だったのではないでしょうか。
これらの非常にパワフルで情熱的な政策の数々を打ち出せたのも、
田中氏の若さと政治家としての長期の在籍期間も手伝っていたのでしょうか。
本書では経済面だけでなく、真の豊かさについても書かれています。
なるほど、職と住は近い方がいいですよね。
職住一体は、理想ですね。
地方に工場や産業が増えれば、都会に出なくてもよくなる。
都会に近い文化環境、買い物、エンターテイメント施設が地方にもそろえば
若者も地方にとどまるかもしれない。大学もしかり。
「都市」と「地方」は相容れないもの、対照的なものだけではなく
実は表裏一体なのかもしれませんね。
そして、時代は令和になりました。
インターネットは普及し、買い物も仕事のスタイルも随分変わりましたね。
「二拠点生活」という言葉も珍しくなくなりました。
田中角榮氏が思い描いていた未来とは、少し異なるかもしれませんが、
これから「都市」と「地方」のいいとこどりをする人達が増えていくのではないかと
期待しています。
テクノロジーの進化が、人々の生活に与える影響は計り知れないので。
あとは私見ですが、地方の工業化に関しては、移転以外に地場産業を育てる
こともいいのではないかと思います。
このブログでも以前紹介しましたが、地方の伝統産業から発展した
新しい技術や産業の育成は、これからも期待が持てると思います。
地方大学からのベンチャー企業の育成、そして地方大学や高専と
地元地域の企業さんとの共同研究、共同開発も期待できると思います。
本書は国家レベルのお話でしたので、民間人の私としては
実感が沸かないのですが、都会と地方を行き来する生活には憧れます。
本書を読んだことで、少しは視点が変わったんじゃないかなという気がします。
うちの子も、田中角榮氏には興味津々。何度もこの本を触っていました。
稀有のリーダーですよね。
少子化という未だ経験したことのない社会変化に、一体どんな問題解決が
あるのだろうか?
さて、次回も「地方創生」をテーマに読書をしたいと思います。
少しだけ読んだのですが、今度は「草の根的」な視点で書かれているのかな。
人の顔が見えてきそうですね。
どっちの視点も必要ですね。
それでは、また。