みなさん、こんばんは。
どうにか読み終わりました。
難解な用語に苦戦して消化不良ではありますが、感想などを書かせていただこうと
思います。
今回ご紹介するのは
高橋勅徳・木村隆之・石黒督朗(著)
『ソーシャル・イノベーションを理論化する』(文眞堂, 2018,¥3,000+税)
です。
まずは著者の方々のご紹介から
高橋 勅徳(たかはし みさのり)首都大学東京大学院経営研究科准教授
木村 隆之(きむら たかゆき)九州産業大学商学部経営・流通学科准教授
石黒 督朗(いしぐろ とくろう)東京経済大学経営学部専任講師
いづれも2018年現在
本書は「ソーシャル・イノベーション」の理論と
「社会起業家」に関する研究について書かれた書籍です。
私が初めて「社会起業家」という言葉を知ったのはこの本がきっかけでした。
小暮直久(著)『「20」円で世界をつなぐ仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)
今から5年くらい前に買って読んだように記憶していますが、当時は聞きなれない
職業だなと思いました。
この本の表紙に「〝思い″と〝頭脳″で稼ぐ社会起業・実践ガイド」と書かれています。
アイデアで社会課題を解決する「社会起業家」。確かに英雄のような存在だなと思います。
今回『ソーシャル・イノベーションを理論化する』という本を読んで、実は
「社会起業家」という言葉が注目されるきっかけになったのは
「グラミンバンク」を考案し、ソーシャルビジネスという概念の提唱者である
ハンマド・ユヌス氏の功績によるものだと知りました。
「グラミン銀行」については、詳細を書くと長くなるので、興味のある方は
知れ部てみてください。
私自身は、大学院の時に授業で習いました。
今になって思うと、これが本当の「ブレイクスルー」の事例だったのだなと
わかりました。
本書を通じて、「ソーシャル・イノベーション」とは何か?
という疑問に対しては
例えば「何らかのアクターによってなされる資源の新結合によって生み出される
社会構造改革」である。(p.170)
あるいは「社会起業家」とは何か?
という問いに対しては
「既存の公共サービスでは解決しえない社会問題に対して、市場の持つ
ダイナミズムを利用することで解決を試みる主体として定義されてきた」(p.236)
というように、ここにきて初めて「ソーシャル・イノベーション」や
「社会起業家」について、その定義を学ぶことができました。
本書は著者の専門分野からわかるように、「経営学的アプローチ」
により理論化されています。
経営学がどのような学問なのか、皆目見当がつかないのですが、
本書の多くのページに、様々な事例が紹介されているので、
社会起業家たちがどんな経緯で課題解決に取り組むことになったのか、
その過程でどんな障害があったのか、などイメージが沸き理解を
助けてくれます。
本書のポイントとして、「社会起業家」というのは果たして英雄か
それとも、倫理的な問題をはらんでいる存在なのかという議論が
なされています。
「社会起業家」は米国・ヨーロッパ・日本それぞれで認識が
異なっていて、この問題の明確な答えを求めることは困難なようです。
社会起業家が、ソーシャル・イノベーションを起こす一方で
新たな課題を生むこともあるというのは、確かに紹介されている
事例からも納得します。
このような問題は、一筋縄ではいかないようですね。
かくして、もし「社会起業家」に興味のある方が本書を読んだ場合
どのような感想を持たれるのか、私もとても興味があります。
とにかく考えても仕方がないから、とりあえず動いてみる、のか
それとも、慎重に「社会起業家」の研究を勉強して
非難されないような社会起業家を目指すのか。
どちらにしても、本書は「ソーシャル・イノベーション」や
「社会起業家」について知るうえで大変参考になる本だと思います。
学術書であるがゆえに、この本1冊ではこの理論を理解することは
困難だと思いますが、豊富な事例がとても参考になると思います。
皆が英雄になりたくて「社会起業家」を志すわけではなくて、
誰もやらないなら自分がやらなければ、と奮起して行動に移す方が
多いのではないかと思います。
たとえ非難されようとも、それに耐えうる信念を持った人。
社会起業家の覚悟。
本書から、社会起業家たちの生の声が聞こえてきます。
よかったら、ご参考に。
さて、次回は古書を紹介する予定です。
そのあと、AIとイノベーションをテーマに。
その次はというと、最近60年代から70年代の著者の思考法に関する
古書を読んでいるのですが、このブログの方でも当時に書かれた本で
みなさんがお求めやすい本を紹介したいなと思っています。
梅棹忠夫さんの本です。
それでは、また。