過去からの提言-「超技術」

みなさん、こんにちは。

ノーベル物理学賞の発表が数時間後にあるようで、日本人研究者の

受賞に期待が高まりますね。

さて昨晩何とか本を読み終わり、今日はもう一度ざっと目を通しました。

実に中身の濃い本で、私のような頭脳では上っ面しか読めていない

のだろうなと思います。

それでも本書が絶版になっている以上は、下手なりにもこの本のことを

伝える意義は十分にあると思うので頑張って書いてみたいと思います。

牧野 昇(著)『超技術-技術革新の新段階』(中公新書, 1971年)

まずはプロフィールから

牧野 昇 氏

東京大学工学部卒業

東京大学講師

(株)東京計器製作所

三菱製鋼(株)取締役磁材事業部長

(株)三菱総合研究所常務取締役(当時)

本書の構成

第一章 技術革新の新しい転換

  1 超技術成立の背景

  2 日本の経済成長と技術革新

  3 効率生産主義の撤退

  4 情報化と価値観の多様化

  5 未来予測の意義

第二章 超技術の条件と展開

  1 超技術の具体的な手法

  2 コンピュータと意思決定

  3 超技術とシンク・タンク

  4 新しい科学技術者の条件

  5 テクノロジー・アセスメント

第三章 社会と産業の未踏領域-超技術の課題

  1 日本産業の阻害要因

  2 産業の情報化とシステム化

  3 新しい成長産業の方向

  4 大型プロジェクトの管理と展開

  5 ダイナミック・エコロジーの提言

本書の著者は、梅棹忠夫さんの著書『情報の文明学』と同様、

脱工業化社会後に「情報化社会」へ移行することを予測しており、

また社会事象の複雑化、科学技術の進歩に伴い発生する複雑な

因果関係をもった種々の問題を処理するには、従来の手法や

組織では困難であり、新しい手法の開発や処理組織の改革が

必要であると述べています。

そこで提言されたのが「超技術」という技術体系です。

「超技術」とは、個別技術の単一なプロセスをたどって発達する段階が終わりをつげ

「個別技術を超えて」他の技術分野のみならず、非技術分野、たとえば環境、社会。

人間および価値観などの広汎な分野をふくめた体系を考慮し、その最適な組み合わせを

はかるために、情報化、システム化などの「ソフトな技術」を中核とする新しい

技術体系を意味するものである。(p.10)

また「ソフトな技術の基盤にあるものは、その複雑で「有機的な関係」のなかを流れる

情報をたくみに処理する「情報化」の技術である。さらにそれらの有機的な関係を解析し、

トータル・システムを適切化する「システム化」の技術である。」(p.48)

簡単にまとめると、社会が複雑な問題を抱えるようになり、今後は技術だけでなく非技術分野をふくめて、コンピュータと人間の頭脳を活用しながら、これらの課題の「最適解」を見いだしていくことを本書を通じてで主張しています。

本書が書かれた当時、日本が高度経済成長期の真っただ中にあった中で、

すでに日本の産業の課題を認識し、未来を見据えていたという、その想像力と

危機意識に敬服します。

AIが急激に進化する現在、問題は一層複雑化し、未来の見通しも益々

困難になっている現状ですが、きっとどこかで未来を予測している

方がきっといらっしゃるはずでしょう。

本書は、随所に注目すべきかことが書かれています。

ほんの一部ですが、抜き出してご紹介します。

◎「循環工学」(p.20)

著者はこれを早急に確立すべきだと主張しています。

「この学問は、従来のようにタテ割りの専門領域で律せられるものでなく、

生態学、医学、経済学、心理学、政治学も包括したものになる。」(p.20)

本書では、具体的にどんな学問であるかは書かれていません。

ご存知の方はいらっしゃいますか?

◎「タテの飛躍」から「ヨコの束ね」へ

科学技術庁の西暦二千年までの技術予測によると、今後10年間も

画期的な技術突破のタネがみあたらない(p.3)。

特別な技術突破を期待しなくても、手持ちの技術知識を改良、改善し

「束ね合わせ」るシステムマネージメントの水準に優劣がかかるように

なってきたのである。(p.4)

◎未来予測

「未来は予測するものではなく、計画して創造していくものである」(p.35)

 「予測の科学」では技術予測の方法が幾つか紹介されており(p.51~p.65)

貴重な参考資料だと思いました。理系の技術者の方のご意見を聞いてみたいところです。

「ダニエル・ベルも、きたるポスト・インダストリアル・ソサイエティにおいては、

「機械技術にかわって、知識技術(インテレクチュアル・テクノロジー)が

きわめて重要な位置をしめる」と予測している。」(p.48)

まさに今日のAIの進化を予測していますね。

◎日本の技術者の欠陥(p.89~p.91)

日本と外国の技術者の知識の分布の相違について書かれていて、

なるほどと思いました。

◎産業の情報化とシステム化(p.100)

「知識集約型産業」の構想

◎ダイナミック・エコロジーの提言

生物と無生物の関係づけ

「人間疎外」と「情報公害」という新しい公害の出現

これは、まさに今この時代の問題をぴたりと予言してましたね。

「AI」の進化で、ひとの仕事が奪われるのか。

情報の問題も、日増しに深刻化しています。

もし牧野氏がご存命だったら、この問題に対して

どんな提言をなされたのでしょうか。

この時代に、牧野氏や梅棹氏のような想像力と構想力をもつ逸材は

どこにいるのだろう。

福岡伸一さんは、もしかしてそのうちのお一人なのだろうか。

今回もうまくまとめることができませんでしたが、大目に見てやってください。

次回は、生成AIとイノベーションというテーマでご紹介します。

さあ、今日は楽しみにしている「ロザンの道案内しよ」のコーナー(4チャンテレビ)

があるので、スタンバイします。

それでは、また。

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