みなさん、おはようございます。
昨日は少し遠出をしたので、移動中読書に没頭できました。
おかげで一気に本を読み終わりました。
米倉 誠一郎(著)『イノベーターたちの日本史』
(東洋経済新報社, 2017,¥2000+税)
著者の米倉氏のプロフィールを簡単にご紹介しましょう。
米倉誠一郎氏
一橋大学社会学部、経済学部卒業。ハーバード大学歴史学博士号取得。
2017年より一橋大学イノベーション研究センター特任教授
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授
同大学大学院社会学研究科修士課程修了。
この本は、うちの相方が注文した本でした。
とある施設で、「サムライ・カンパニー」の話を聞いて
見つけ出した本でした。
相方曰く、一橋大学の先生が書かれた本だから、間違いないと思ったそうです。
この本を読み終えた感想としては、また素晴らしい本に出会えた、
何冊も買って大切な人達にプレゼントしたい本だと、そう思いました。
いつでも読めるように、そばに置いておきたい本です。
さて、この本のすばらしさを、私の拙い文章でどう伝えたらいいのだろう?
まだ考えがまとまっていませんが、書きながら気持ちを整理していきたいと思います。
本書の前書きには、こう記されています。
「本書は、明治から昭和初期にかけての日本の近代を、「創造的対応」の視点から
描こうとしたものである。」
よって、表題のように全員が士族というわけではないのですが、とりわけ士族たちの
華麗なる転身に心躍らされた次第です。
本書に登場する人物は、なかにはとても有名な人物も登場するのですが、
多くは全く知らない人物でした。
これほどの偉業を達成しながら、教科書に載らないのはおかしいではないかと
思うほど。
それを言うと、ほとんど歴史に名を残さない人々が日本の近代化に尽力を注いだことでしょうから、本書に名前を残されたことは、大変栄誉なことだと思います。
さて、本書の要所は「創造的対応」というキーワードです。
この視点から、歴史を評価し直した著者のセンスに敬服いたします。
この言葉は、もともと「シュムペーター」の言葉だそうですが、
なるほど当時の日本政府の「創造的対応」とサムライたちの「創造的対応」は、
日本がかくも短期間のうちに急激な近代化をなし得た理由に納得します。
「財閥」という組織的イノベーションが果たした役割も、教科書からは
知ることができませんでした。
いきなり「財閥解体」から知るわけですから。
勿論、士族の多くが事業に失敗し、本書で取り上げられるのはごく稀な例では
ありますが、特権階級を失った武士たちが、リスキリングをして見事な転身を果たす姿は、
今の日本のビジネスマンのみなさんが置かれている状況にも重なるようにも思えます。
黒船という、「DX」「生成AI」の波が押し寄せてくる中で、ビジネスマンのみなさんは
どのようにこの波を乗り越えていかれるのでしょうか。
本書は光の部分と同時に、課題も指摘しています。
「基礎研究」の大切さ。
うちの相方も研究者の端くれなので、よく「基礎研究」の大切さを口にします。
ふと、ベルツの言葉を思い出します。
確かに、この本に登場する人物たちは待ったなしの状況の中で、柔軟に外国の知識や
技術を吸収し、日本に合った形で移植していきました。
でも、その技術や知識の背景にあるものを、置き去りにしてこなかったのだろうか?
いわゆる「根っこ」の部分が、もっと言うと「種」ごと輸入しなかったということ。
それは、理化学研の創設者である高峰譲吉や後継者である大河内正敏も気づいていたのかもしれません。
相方に、「基礎研究」ってなに?と聞くと、まずその定義から考えないといけないと。
話していくうちに、もしかしたら、「教養」すなわちリベラルアーツを日本人は軽んじてきた
傾向にあるのかもしれないと。
奇跡の急激な近代化と戦後の高度成長を成し遂げてきた日本ではありますが、実は未だ
根を下ろしていないのではないだろうか?そんな疑問が頭をよぎります。
砂上の城にならないように。
この本は、サクセスストーリーであるとともに、日本人が置き去りにしてきた
大切な何かを見つめ直し気づかせてくれる、そんな良書だと私は感じました。
また素晴らしい研究者の方を知ることが出来てよかったです。
ずっと昔の人々の話なのに、とても生き生きと人物像が浮かんでくるのは
著者の文章力のおかげでしょう。
登場人物たちは、今もこの本の中で生き続けているようなそんな気がしました。
できるだけ多くの人にこの本を読んでいただきたいです。
うちの子にも、もう一冊買って大学生のうちに読むように持たせたいと思います。
上手く本書の魅力を伝えることはできませんでしたが、今回はここまでにします。
ますます「イノベーション」も「イノベーター」のことも知りたくなりました。
note「ブレイクスルー思考講座」を通じて、自分なりの研究をできたらいいなと
思います。
さて、次回は<ソーシャル・イノベーション編>で「空海」を読むことに
します。夏休みの課題の本も読まないといけないな。
さあ、外が明るくなった。
今日は昨日のぶんも取り返すべく、勉強頑張ろう。
それでは、よい週末を!