みなさん、こんばんは。
Chat GPTについて、まずは1冊読み終わりました。
次は実践編を読もうと思います。
さて、今週の始まりは野中郁次郎先生の訃報を新聞で知り、
いまだショックを引きずっております。
なぜなら、野中先生は私にとって道しるべだと勝手に期待していたためです。
つい最近、先生の「ソーシャル・イノベーション」に関する書籍も購入しましたし、
受験勉強が落ち着いて、読書を再開する際は、先生の書籍を中心に読む予定でした。
勿論、今も予定は変わりありませんが、今後もさらに先生の書籍をもとに
答えを導いていただけるものと信じておりました。
大変残念で仕方がありませんが、今後も先生の書籍をもとに
ヒントを見つけて行こうと思います。
拙文で大変僭越ではございますが、私なりの追悼の意を込めて
過去に野中先生の名著を読み、記事を投稿したものを
アーカイブいたします。
もし、まだお読みいただいてない方は、参考にして頂ければ
幸いです。
以下 アーカイブ記事
1.<イノベーション>知識創造企業(前編)
随分引っ張りましたが、今回ご紹介するのは
野中郁次郎+竹内弘高(著)梅本勝博(訳)『知識創造企業』
(東洋経済新報社, 2006年, ¥2000+税)
まずはこの本をご執筆・翻訳された先生方に敬意を表します。
そして、この本をしつこいほどに勧めてくれた友人に感謝の意を表します。
この本にたどり着くまでに、ちょっとしたストーリーがあります。
前置きが長くなりますが、ご了承下さい。
実は、先に手にしたのはこの本の続編『ナレッジ・イネーブリング』(次作でご紹介します)の方でした。
私の友人が「すごい本を見つけたよ。これはずごそうだわ。掘り出し物だわ。」と
珍しく興奮した様子で見せてくれたのが『ナレッジ・イネーブリング』でした。
スミレ色?というのでしょうか、薄紫色の、センスの良いイラストが描かれた本です。
私も友人も、わりと本の表紙カバーをみて第一印象で決めたりすることが多いみたいです。
いわば本の顔。著者のセンスや意向なども反映されているのではないかという憶測です。
この本には、不思議と魔力のような人を惹きつける魅力的な雰囲気を醸し出していました。
古書で購入したようですが、全く褪せない魅力的な本でした。
友人は、当分読む時間がないから貸してあげると言って、私に預けてくれたのが2年くらい前だったか、さっそく開いてみると、この本が続編だと書かれていたので面白そうだけど
前作を手にいれてくれるまで待つことにしました。
とても存在感のある本だったので、本棚の目立つところに飾っておりました。
再び、この本の話題が出たのは、私がちょうど日本の美意識に関心があって、今その本を探していると友人に話したときのことでした。
じゃあ、いまこそあの本を読んでみたら?SECI(セキ)モデルを勉強してみたら?と。
すぐには関心が持てず、何が関係しているのか、友人が何を意図しているのか全くわかりませんでした。ただ著者のお一人が野中教授だと知り、もしかしたらイノベーションと関係しているのかもしれないと思い、友人の提案に乗ってみることにしました。
こうして、いよいよ一作目を注文して、我が家に届くのに少し待ちました。古書だったので、少し時間がかかりました。私より友人の方が、いつ届くのだろう、そろそろかな?と気にしていました。
早く私に読ませて、感想が聞きたいようです。エッセンスが知りたいみたいです。
今回は、まだ3章までしか読んでおりませんが、そこまでの紹介を少しさせてください。
本書は、1970-80年代の日本企業の成功の要因として、日本企業が「組織的知識創造」の
技能・技術によると主張しています(P.ⅱ)
「組織的知識創造とは、新しい知識を創り出し、組織全体に広め、製品やサービスあるいは
業務システムに具現化する組織全体の能力のことである。」(P.ⅱ)
本書では人間の知識を「形式知」と「暗黙知」の二種類に区別してとらえています。
この「暗黙知」こそ、日本企業の競争力の重要な源泉であったと考えています。
第1章では、西洋と日本のマネージャーの「組織的知識創造」へのアプローチの違いを述べています。特に日本的知識創造の特徴について、ホンダ・シティの開発過程を例に挙げて紹介しています。
第2章では、「知識」とは何か、それはどうやって作られるのか、という大前提を検討します。
西洋と日本で、「認識論」(知識とは何かを研究する哲学の一分野)へのアプローチが異なることがわかります。この違いが、日本の組織的知識創造の特有さを理解するカギとなるようです。
この章は、哲学的アプローチで難解でした。哲学が苦手な読者はこの章を飛ばして3章からスタートすることを勧めています。
私も大学の教養で哲学の授業を履行しておりましたが、この章の内容には理解が追い付きませんでした。でも哲学には興味はあります。よかったら参考文献もご紹介します。
個人的には研究したり、論文を書いたりする上で哲学は必要だと思っています。
ドミニック・ㇽクール(著)矢崎壮宏/竹中俊彦/三宅岳史(訳)
『科学哲学』 (白水社,2005年, \951+税)
第3章では、「組織的知識創造の理論」を解説しています。
「知識創造」には、認識論的次元と存在論的次元があり、認識論の次元では、
「暗黙知」と「形式知」とのあいだで知識変換が起きるといいます。
暗黙知と形式知が相互作用するときにイノベーションが生まれると。
「組織的知識創造とは、暗黙知と形式知が四つの知識変換のモードを通じて、
絶え間なくダイナミックに相互循環するプロセスである。」(p.105)
そして「組織的知識創造は、個人レベルから始まり、メンバー間の相互作用が、
課、部、事業部門、そして組織という共同体の枠を超えて拡大していくスパイラル・
プロセス」(p.108)だそうです。
いわゆるSECI(セキ)モデルといわれるフレームワークのようですね。
私には難解でした。何回か読み直してみようと思います。
これまで読んだイノベーションに関する本とは、アプローチが異なっていて
斬新なアプローチのように感じます。
素晴らしい研究に触れることができて、友人に感謝しています。
次回は、本書の後編をご紹介したいと思います。
2.<イノベーション>知識創造企業(後編)
少し前のことですが、「「潜在意識」について、イラストを探しているんだけど、
何かいいアイデアはない?たいてい「氷山」のイラストが出てくるから、それだと
ありきたりだし。」と相談を受けました。
「じゃあ、木のイラストにしたら。根っこの部分が潜在意識ってことで」と答えると、
面白いアイデアだねと言ってくれました。結局は、アプローチを変えたので、この案は却下されたのですが、散歩中に木を見ることが多いので、このアイデアが自然と浮かびました。
ところが、最近になって、果たして潜在意識は「根っこ」だけだったのだろうか?いや違う。それだけじゃないことに気が付きました。
話は変わりますが、皆さん園芸はお好きですか?花や野菜や果物などを育てた経験はおありでしょうか?
私も、数年前にトライしたことがあります。本当は、すごく苦手で正直めんどうくさいなと
思ったのですが、子どもたちの食育のために頑張ることにしました。
ある年は、キュウリを。またある年はイチゴを。
結果はと言うと、一応それらしい形のものは何とか実りました。
喜んで写真を撮ったのですが、いざ食べてみると、なんとも言えない味。
なんだ?これは!とても食べられたものではありませんでした。
園芸の得意な友人や父に告げると、それは「土」がよくないからではないかと。
もしくは「肥料」かと。
え、土って、ホームセンターで買ってきた土をそのまま使ったんだけどダメなの?
種をまいて、水やりさえすればいいんじゃないの?イチゴの場合は、人工授粉をしましたが。
園芸は実に奥が深い。
木もおそらく同じなのでしょう。木の隠れた部分、いわゆる「潜在意識」に相当する部分は、根っこだけではなく、地中の土やバクテリアなどの生き物そういったものの相互作用があるのではないかと。
前置きはこのくらいにして、本題に入りましょう。
この投稿までに、相当時間がかかってしまったので、すでに本書を手に取り
読み終えた読者の方もいらっしゃるかもしれませんし、あらすじなどを読んで
だいたいの内容を把握されている方もいらっしゃるかもしれません。
ここで、あえて私のへたくそな要約を書いても全く意味はありませんので、
今回は、総評というか私が本書を読んで感じたこと、イメージしたこと、これまで
イノベーションの本を読んできた中で、本書の位置づけについて私見を書かせていただきたいと思います。
勘違いや誤解、思い込みもあるかもしれませんが、一読者としての感想として寛容に
読んでいただければ幸いです。
前置きで、園芸と土の話をしましたが、本書を読み進めていくうちにこのことがイメージとして浮かんできて、繋がりました。
これまでご紹介してきた本は、私なりの解釈でいうと、いかに消費者に喜ばれる花や野菜や
果物を作るか、いわば地表に現れる成果物について書かれていたように感じました。
そのための種子の選別、配合、掛け合わせをどうするか?
クリステンセン教授が、なぜイノベーションが予測可能であるはずだと主張されたのか?ずっと釈然としておりませんでした。イノベーションは、予測不可能な、動的なダイナミズムによって起きるものではないのかと。
でも、消費者の求めるものが何かがわかれば、自ずと種子、配合、掛け合わせはイメージでき、どんな花を花が咲くのか、どんな実がなるのか予測可能なのかもしれません。
もうお気づきの通り、本書は「暗黙知」すなわち園芸でいうところの「土」というより「土壌」に着目されているのではないかというのが私の解釈です。
そして、前置きに描いた通り、「土壌」こそが美味しさを決める重要なファクターなのでは
ないでしょうか?
どんなに見た目が完成されていても、中身は美味しくない、では意味がない。
また作りたいとは思わない。
本書は、全体を通して非常に難しい理論でした。まだまだ消化不良で、きちんと理解できていません。なので、あえてメタファーでとらえてみたいと思います。
そこで、「土づくり」について、簡単にネットで調べてみました。
「土づくり」にとって最も重要なのは、生物(バクテリア)の多様性だそうです。
これは、本書でいうところの、様々な部署の人たちが一同に会して、合宿や飲み会に
参加して意見交換をする、交わることだと思います。そこで知識の「熟成」が起こる。
そして「土づくり」においてもう一つ大切なことは「化学肥料」のやりすぎに注意することだと。なぜなら「化学肥料」を与えすぎることによって、バクテリアの数が減ってしまうからだと。
本書の後半では、加えてどのような組織であるかが重要であると書かれています。
土も同じかもしれません。畑を耕すにしても、ただむやみに土を掘り起こせがよい訳では
ないのでしょう。どのように土を混ぜるのか(内部の交流)、空気(外部との交流)を入れるのか?
どんな肥料(外部からの知識)を取り入れるのか?それを決定するトップの考え・役割、風土(企業風土)などが大事なのではないでしょうか?
そして、これらの循環が、土壌を肥沃なものに育てて、そして美味しい成果物を作ってくれる。
肥沃な土壌がなければ、野菜や果物はやがて育たなくなる、先細る。
これまで読んできた本と、この『知識創造企業』をはじめとするこれからご紹介していく
本を合わせてようやく「イノベーション」の全貌が明らかになるのではないかと思います。
ここがゴールでないか?多分、そうではないかと思います。
日本は、かつて本当に素晴らしい土壌を作ったんだろうと思います。
しかし、やがてその土壌がやせ細ってしまったのかもしれません。
何が原因なのかは私にははかり知れません。土に例えるなら、「化学肥料」の与えすぎだったのでしょうか?それはもしかすると「技術」に頼りすぎてしまったといえるのでしょうか?それとも、土を耕すことがおろそかになってきていたのでしょうか?
いづれにしても本書を読み直し、さらに進化させることで再び肥沃な土壌を作っていただけたらいいなと節に願います。
3.失敗から何を学ぶ―『失敗の本質』
みなさん、こんばんは。
これは、夏休みに家族と一緒に訪れた「大和ミュージアム」の写真です。
対象物が大きいので、どうしても見学されている方が映り込んでしまうので、最小限の
ショットに削りました。言うまでもなく、戦艦大和の模型です。
野中郁次郎先生が、戦史の研究もされているということは以前から承知していましたが、
やはり戦争のお話は苦手だなと避けてきました。
今回、思い切って戦記に関する書籍を読もうと思ったのは、この大和ミュージアムに訪れたことが大きいかもしれません。
自分の子どもくらいの若者が大和と共に海底へと沈んでいったと思うと、つらかったです。
海底に沈んだ大和の映像を、館内で見ることができました。映像の最後に戦没者の
お名前の字幕が流れると、涙がこぼれました。
こうした尊い犠牲をどう弔えばよいのだろうか。
ここに訪れた意味を考えさせられました。
今回ご紹介するのは
戸部良一氏 他著 『失敗の本質』(中央文庫, 2024(初版1991)年, 762+税)
『失敗の本質』は、このブログで読書を続けた中で最もつらい読書でした。
もう、無理。やっぱりやめようかなと、何度も思いました。
お話も難解でした。馴染みのない言葉が次々と出てくる。
戦局がよくつかめない。
でも、何とか事例研究を読み終えると、2章からトンネルを抜け出したように
視野が開けるのです。
それでは、順序が前後しますが著者の先生方をご紹介しましょう。
戸部 良一 (氏) 国際日本文化研究センター名誉教授(政治外交史 専攻)
寺本 義也 (氏) 元早稲田大学大学院名誉教授(組織論専攻)
鎌田 伸一 (氏)元防衛大学校教授(組織論専攻)
村井 友秀 (氏)防衛大学校名誉教授(軍事史専攻)
野中郁次郎 (氏)一橋大学名誉教授(組織論専攻)
以上
本書によると、日本軍が大敗した原因の一つとして、「組織」の問題が指摘されています。
日本軍は組織で戦い、組織の失敗で敗退してしまったともいえるようです。
この教訓から、日本は何を学んだのでしょうか?
日本軍の組織の問題点は、今日改善されたのでしょうか?それともそのまま引き継がれているのでしょうか?
本書にはこのように書かれています。
「現段階では、日本軍の特性は連続的に今日の組織に生きている面と非連続的に
革新している面との両面があると考えている。」(p.395)
ゆえに、あらゆる組織に属する方々に、この本をぜひとも読んでいただきたいのです。
私が読む限りでは、日本軍の教育システムは今も根強く残っているように感じます。
正しい答えを導く、暗記重視の教育に偏重すると、予想外の事態が起きたときに
それに対処する柔軟な発想力がおろそかになってしまいます。
それが、イノベーションを生みやすい土壌を創り出せない原因の一つになって
いるのかもしれません。
あるいは突拍子もないアイデアが出ることに抵抗がある、均質性を求める組織もまた
イノベーションの妨げになっているかもしれません。
日本軍の組織がどのような失敗をしたのか、本書を読まれた経営者の方々、
現場の方々、あるいはスポーツをされている方々は、思い当たるところが
多々あるのではないかと思います。
どうすれば著者らの言う「自己革新的組織」を築けるのか?
私自身は、「学校」教育はずっとこのまま変わらなくても
よいのだろうかと思います。
子どもたちが初めて「組織」の中に組み込まれていく、その初期の段階から
組織論は始まっているのではないだろうかと。そんな気がしました。
本書を読み終わって、とても感動しました。
著者の先生方に、心から感謝の意を表したいです。
歴史の資料から紐解く、とても困難で根気の必要な研究だったのでは
ないでしょうか。そして戦記から「組織論」の問題に焦点を当て、
その本質を見抜き、後世に素晴らしい教訓を残していただきました。
少しづつでもよいから、意識を変えていかなければならない。
日本の未来のためにと、散っていった人々に報いるために。
さて、幸運なことに『失敗の本質』には続編が出版されています。
四半世紀をかけて執筆されたということで、
変わりゆく日本をどのように分析されているのか、大変楽しみにしています。
4.失敗はなぜ繰り返されるのか
さて、前作『失敗の本質』に引きつづき、続作となる
野中郁次郎(編著)『失敗の本質-戦場のリーダーシップ』
(ダイヤモンド社, 2023,¥1,800+税)
を読みました。
まずは簡単に著者のプロフィールをご紹介します。
野中 郁次郎 氏 一橋大学名誉教授
杉 之尾 宣生 氏 元防衛大学校教授
戸部 良一 氏 国際日本文化研究センター教授
土井 征夫 氏 武蔵野大学 客員教授/日本信号 顧問
河野 仁 氏 防衛大学校教授
山内 昌之 氏 明治大学特任教授
菊澤 研宗 氏 慶応大学商学部教授
企業の不祥事のニュースが流れるたび、
なぜ同じ失敗が繰り返されるのだろう?と思うことはありませんか。
そのたびによく耳にするのは「企業体質」とか「企業風土」という
キーワード。
納得がいくような、いかないような釈明。
企業の失敗だけでなく、世の中はなんだかモヤモヤすることが
多いのではないでしょうか?
このモヤモヤノ正体は何なのか?
そう思った方は、是非とも本書をお読みいただきたい。
戦史を読むということは、目をそむけたくなる悲惨な事実と向き合う
勇気が必要かもしれません。
しかし、そこにこそ深い真実が隠れていて、二度と同じ悲劇が起きないように
私たちはその教訓を学ばなければなりません。
本書は、政治的な話にも、企業の経営的な問題にもとらえることができます。
いわゆる「本質」というのは、あらゆることに当てはまるのかもせ入れません。
「グランドデザイン」「空気」「取引コスト理論」など、
この時代の問題を解き明かすべくヒントがたくさん書かれています。
本書から学んだことは、失敗をただ責めるだけではなく、なぜ失敗して
しまったのか。その背景や相互関係、メカニズムを解明することの
必要性です。
これが明らかにされなければ、失敗は永遠に繰り返されるかもしれません。
なぜ企業の隠蔽や不正が起きるのか?
そこには必ずしも悪意が存在するわけではないかもしれません。
非合理的な意思決定をすることが、時に合理的であるという
矛盾が生じてしまうこともある。
このメカニズムを是非、本書から確かめていただければと思います。
できるだけ多くの方にこの本をお読みいただき、実践していただければ
世の中が少しづつ変わっていくのではないかと期待しております。
以上
野中先生の著書は、今後もできる限り可能であれば網羅的に読んでみたいと思います。
日本のあるべき「イノベーション」について、今後も先生から
たくさん学びたいと思います。
先生、きっとまた日は昇りますよね。
そして長い眠りから覚めて、花はまた咲くはず。